BDたしろです。
さてさて、ニュースとしてはもう既に時間が経ってしまいましたが、
LINEスキーの創始者ジェイソン・レヴィンサル(Jason Levinthal)によって、マット・スターベンツ(Matt Sterbenz)が社長を務める4FRNTが買収されたという話について、個人的に感じるものがあったのでちょっとここに書いてみたいと思います。

スキーブランドの買収、しかも海外でのお話なんて、珍しいことでもありませんし、正直大した興味を持たれる話題でもないかと思います。
僕自身は今こうしてこの業界で4FRNTを扱う仕事をしておりますから普通より興味をもつのは当然なのですが、
ただそのことを一旦脇に置き、一人のフリースキー好きとして、アツい話だなぁ!と感じたんです。


コトの背景と登場人物について少し説明させていただきますと、

まず、今回4FRNTを買収したというジェイソン・レヴィンサル。
1995年に、大学を出たばかりのジェイソンは”LINE”というスキーブランドを創業しました。
ガレージで自分の手で作り出した「スキーボード」と呼ぶ1mより短いツインチップスキーを販売し始め、
それはスケートやスノーボードカルチャーにも通じて多くの若者に支持されました。
エックスゲームの種目にもなり、その後それはフリースキー文化の一つの幹となり、スキーの楽しみを大きく広げるものでした。
LINEは当時エックスゲームのスキーボード種目で絶対的な王者であったマイク・ニック(Mike Nick)や、
今も現役でLINEライダーとしてカリスマ的人気を誇るエリック・ポラード(Eric Pollard)、スコーゲン・スプラング(Skogen Sprang)、マイク・ウィルソン(Mike Wilson)などなどの魅力的なライダー達を擁し、そしてジェイソン自らもプレイヤーとして活動し「社長」兼「ライダー」として活躍しました。
フリースキーのライダーによるスキーブランド、”ライダーズブランド”としてLINEはフリースキー文化とともに発展を遂げ、ブランドを着実に確立して行きます。
そしてジェイソンは2006年、大手スキーメーカーであるK2スキーにLINEスキーを売却してしまいますが、自らもK2社に入り、K2傘下のブランドとなるFTブーツの立ち上げに携わるなどでビジネス手腕を発揮します。
FTを軌道に乗せると、今度はK2を離れ自身の新たなスキーブランド”Jski”を立ち上げました。
インターネット限定での販売というやり方で運営し、現在成功を収めています。
スキーを自分でガレージで作り始めるところから、自身のブランドを育て、更に大手企業の下でも経験を積み、それをもとにさらに新しいビジネスを始める、ジェイソンの創造力と行動力には驚かされるばかりです。

続いては我らが4FRNT創始者のマット・スターベンツ。
LINEに遅れること7年、すでにフリースキー文化は発展しつつあり、自身もフリースキーのプレイヤーでもあるマットは2002年に”4FRNT SKI”を立ち上げます。
ジェイソンと同じくライダー兼社長として、会社を運営し始めます。
LINEと同じく”ライダーズブランド”となる4FRNTの会社の運営方法は、とてもユニークなものでした。
ライダーによるオーナーシップ制を導入してライダー自身が板を開発して製品化し、その売上の利益から80%がライダーの手に渡るというものでした。
エリック・ホレイフソン(Eric Hjoreifson)やカイ・ピーターセン(Kye Petersen)などの今をときめくビッグマウンテンライダーから、ソチ五輪ハーフパイプゴールドメダリストのデビッド・ワイズ(David Wise)、ワイリー・ミラー(Wiley Miller)、また古くはスティール・スペンス(Steele Spence)、ビンセント・ドリオン(Vincent Dorion)や故CR・ジョンソン(CR Johnson)などなど懐かしいライダーたちも在籍していたりとLINEに負けず魅力的なライダー陣で、4FRNTは個性的な板を作り続け多くのファンを持つことができました。

ここでふと心配になるのは、利益の80%がライダーに渡るということは、普通に考えて会社として大丈夫なの?ということ(笑)。
実際のところ、実直なマットは方針通り運営して自分の手元にあまりお金は残っていなかったようです。
奥さんに「ウチはいつになったらお金持ちになるの?」なんて言われてしまったこともあるとか(笑)


ところで、ライダーズブランドの意味って、なんでしょう?

どんなスポーツでも、まずはプレイヤーがいなくては始まりません。
それをプレイする人がいて、見る人がいて、またそれらは相互に入れ替わったりもしつつ、そのスポーツの魅力が醸成されていくものと思います。
スポーツの進化は優れたプレイヤーによってプッシュされ、そういった影響力をもつプレイヤーをフリースキーの世界ではライダーと呼びますね。
多くの人をインスパイアし、興奮や楽しみ、新しい世界の入り口を示してくれたりと、ライダーとその映像は非常に重要な意味を持つものとなります。

そんなライダーという存在は、一旦コンペや映像から離れるとすぐに忘れ去られてしまいます。
フリースキーシーンにおいて彼らはなかなかに厳しい立場にありますが、4FRNTではオーナーシップ制をとることでライダーたちのキャリアを長く活かすことが出来、そのことは会社の成長にも重要なことだとマットは考えました。
ライダー自身がたくさんのテストを繰り返して作りこんだ個性的で完成度の高いスキーを世に送り出し、かつそれをプロデュースしたライダーにしっかりと還元をする。実際に、こうした流れで4FRNTは今まで数々の名機を生み出し、それらは多くの高い評価を得てきました。

こうしてみると、マットの考えるライダーズブランドとは、単にライダーが運営するスキーブランドということではなく(^^;)、ライダーとブランドが相互に活かしあう仕組みを持ったブランドと言えそうです。

ただこの厳しいフリースキー業界のなかで4FRNTは、数あるブランドの中でも唯一の個人所有の会社となりました。会社として今後、いろんな選択肢が考えられると思いますが、大手資本の傘下になることはマットのやってきたやり方を続けるには難しいでしょう。

そんな4FRNTに、ライダーズブランドやフリースキー業界を誰よりもよく理解していて、マットの考えも充分理解していたジェイソンが手を差し伸べたのはある意味、必然だったのかもしれません。



単なる儲け話ではなく、志のある魅力的なブランドを維持するために、大手資本に買われて個性が死んでしまうくらいならと自分で買ってしまうあたり、また自身が業界で得てきた経験と知識を惜しみなく注ぎ込む姿勢に、非常に男気を感じます。めちゃくちゃかっこいいと思います!ジェイソン!
そして蛇足ではありますが、この人物が僕がスキーにのめりこむきっかけとなったブランドである”LINE”の創始者であるということも、なんとも胸を熱くさせる一因なのでした(^^)

これまでもフリースキーを盛り上げてきてくれたこの二人のコラボレーション、
これからの4FRNTの動きがとても楽しみです!